作り手と売り手の気持ちがひとつになって誕生した
ユニオンインペリアルのミレニアルラスト Vol.1
伊勢丹新宿店メンズ館と複数の靴メーカーがコラボレートし、各ブランドがミレニアル世代に向けた靴をつくるミレニアルラスト企画。この企画を担当した伊勢丹新宿店メンズ館の紳士靴バイヤーを務める田畑智康さんと、ユニオンインペリアルの小田哲史が対談。出会いやドレスシューズの現状、ミレニアルラスト企画に至るまでの経緯など、さまざまなテーマで語ってもらいました。
Profile
足に馴染む靴というアプローチで始めたユニオンインペリアル
ユニオンインペリアルが伊勢丹新宿店メンズ館(以下、伊勢丹)で取り扱いが始まったのはいつからでしたか。
小田哲史(以下、小田)ユニオンインペリアルが2008年春にスタートして、半年遅れの2008年秋からだったと思います。
田畑智康さん(以下、田畑)当時、私はアシスタントバイヤーで店外の催し物を担当することが多く、気が付いたら売り場にユニオンインペリアルがあったという感じでした。
小田靴メーカーとしては、伊勢丹で扱っていただけるのはステータス。伊勢丹新宿店の靴売り場は世界的にも有名で、イタリアでも知られていました。取り扱いがスタートした時には夢のように嬉しかったのを覚えています。継続することは大変でしたが皆さまのおかげで現在に至っています。
田畑ユニオンインペリアルを初めて見たときは、ちょうど国産靴やファクトリーブランドが支持され始めていた時代。群雄割拠の国産靴のなかで、ユニオンインペリアルは歴史的な背景からイタリアらしさがあって、店頭にあると思わず手に取ってみたくなる靴でした。
小田ユニオンインペリアルを始めたのは、我々の伝統を国産ファクトリーブランドとして世に問いたいとデビューさせたからですが、ちょうど国産靴が注目され始めていたタイミングだったのですね。
田畑ユニオンインペリアルは他のブランドと比べると、靴づくりのアプローチが違いますよね。足を入れると、まず木型が抜群にいいのが分かる。当時から大変よくて、足にフィットするというのが第一印象。製法がハンドソーンということもあって、お客様に感想を聞くと長時間履いても疲れないという声はよく聞きます。
小田田畑さんのおっしゃる通り、ユニオンインペリアルは後発の国産ブランドなので他のブランドではやっていないことをやろうという戦略はありました。他がグッドイヤーウエルトだから、うちはハンドソーンにしようとか。おかげさまでお客様からは履き始めから足に馴染み「靴擦れしにくい革靴」といわれます。それはまさに狙っていたことで、他のブランドとは違うアプローチで靴づくりを始めたのです。国産靴ブームがあり、タイミング的によかったのかもしれませんね。伊勢丹で取り扱いがスタートしてから人気が広がっていきました。
田畑2008年頃ってイタリアのロングノーズブームが名残としてあり、質実剛健なクラシックな靴づくりの中に艶っぽさを兼ね備えていたのがユニオンインペリアル。他にはないたたずまいや技術的な完成度の高さなど、さまざまな要素のバランスがすごくよかったのです。そして、足を入れてみるとどうしてこんなに履きやすいんだって思うくらい靴擦れしない。それは木型がいいからで、その木型を忠実に再現できる技術力があったのも支持された理由だと思いますね。
小田そういえば、ユニオンインペリアルは結構ロングノーズでスタートしたので、他のブランドの靴とはシルエットや雰囲気が違っていたのかもしれません。
目指したのはミレニアル世代に合った本質的な価値のある靴づくり
ユニオンインペリアルの商品構成を教えてください。
小田全体のラインナップは3万円台から4万円台後半までありますが、4万円台後半だと海外ブランドと競合してしまいます。3万円台後半から4万円前半までが日本の靴メーカーが戦っている価格帯で、このくらいの価格が普段使いし易いギリギリのライン。伊勢丹では3万円台後半のモデルを中心に展開しています。
田畑伊勢丹の場合はいわゆる平場といわれている場所にさまざまなブランドの靴をそろえています。どのブランドにも松竹梅のように価格帯のレンジがありますが、うちだとお客様の要望が多い3万円台の商品を靴メーカーとどう商品開発していくかが大事で、お互いの独自性を出しながら一緒に取り組んでいます。
小田昔と比べると革などの値段が上がっているので、3万円台では収まりきれなくなってきたというのが最近の状況ですね。
田畑一方でクールビスが定着してからオフィスシーンでの服装のカジュアル化が一気に進みました。ドレスシューズのマーケットが厳しくなっているというか、より本質的な価値がないと生き残っていけないという時代が来たのではないかと感じています。
小田ドレスシューズのマーケットが急激にシュリンクしているというデータがあって、靴メーカーとしてはいかに時代にアップデートさせていくのかが問われている。ミレニアル世代を中心とした若いお客様が求めるものを提供しないといけない状況という点で、時代が確実に変わっているのは感じています。そこで田畑さんと一緒に考えたのが今回のミレニアルラスト企画というわけです。
田畑今回の企画は、小田さんをはじめ靴メーカーの人たちといろいろな話をした際に、着想を得て考えたものです。ドレスシューズが売れない理由を分析すると、若い人たちが買わなくなっていることが分かったのですが、商品が10年以上もアップデートしていないことにも問題があるんじゃないかと思ったのです。昨年店頭でお客様の動向を見ていると、試しに履いたものの諦めるという若い人が結構いて、そこが引っかかっていました。なのであれば、彼らに合った靴をつくらないといけなく、ユニオンインペリアルがもともと持っている履き心地のよさというのを今の時代に合わせることが大事なんじゃないかと思いました。
小田我々の木型に対するこだわりもお客様に伝わっていなくて。そのよさも知ってもらいつつ、アップデートも必要なので、靴づくりを初めから考え直すという機会にもなりました。
田畑日本人と欧米人は足形が違うといわれていますが、その違いをきちんと理解している人って実はあまりいなくて、それを正確に教えていただいたのが小田さんでした。そこで、ユニオンインペリアルとしっかり組んで靴づくりを進めていけば、これはいいものができるんじゃないかって。あとは小田さんのおっしゃる通り、それをお客様に伝えていくのは我々の仕事。そんなきっかけで企画が進んでいきました。